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俺の思いは急ぎすぎですか。
その日遥さんは朝からそわそわしていた。
朝から何度も時計を見てため息をつく。
携帯を見る。
腕時計を見る。
当然同じ時間。
またため息。
遥さんの様子に気付いた響子さんが俺に視線を寄越す。
目線だけだが、何かしたんでしょ!と言ってる気がした。
いいえ!と首を振ると、
嘘でしょ、とばかりに軽く睨まれた。
やぶへびもいいとこだ。
予定のなかった飛び込み同然のお客からの電話でそれからバタバタし、昼をとるのも忘れ気が付いたら退社時間が迫っていた。
「侑司!」
「はいっ」
突然呼ばれ伸びた背筋と共に返事をすると、
「帰るぞ!」
腕を掴まれた。
退社時間まではあと5分ある。
完全にフライングだが、響子さんを始め、泰生さんも真由ちゃんもいいから、と無言で頷いている。
挨拶もそこそこに会社を出ると先に乗り込んだ遥さんにタクシーに引き摺り込まれた。
「どこに行くんですか」
「すぐ着くから」
その言葉の通り、本当にすぐ着いた。
タクシーに乗ってから5分ほどしかたっていない。
乗る意味があったのか。
遥さんの気がそれだけせっていた、ということか。
タクシーを降りるとそこはマンションが立ち並ぶ所謂住宅地。
街に近いそこそこの高級住宅地。
ほぅーと上を向いて背の高いマンションを眺めていると、遥さんに腕を引かれた。
マンションの一つにずんずんと入っていく遥さん。
エレベーターに乗り、15階で降り、一番奥の部屋の前で遥さんが足を止めた。
鞄から鍵を出し、ドアを開けると俺の背中を押した。
「遥さん?」
「とりあえず入って」
穏やかな笑顔で言われ、玄関で靴を脱ぎ部屋に入った。
その部屋には家具も家電も揃っていたが、モデルルームのように生活感は感じない。
何インチあるのかわからないほどでかいテレビの前に置いてあるでかい俺でもゆうゆうと寝転がれるソファに俺を導き座らせると遥さんも隣に腰を下ろした。
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