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俺の思いは急ぎすぎですか。

「か、かかか買った!?」 「うん、あ、でも、ここ兄ちゃんの持ち物で、設備とかも最新じゃないし、建ってから結構年数経ってるし、億とかじゃないから」 「な、何年ローンですか………」 「ゼロ」 「え!?」 「一括」 「い!?一括!!!???」 もう処理能力が働かない。 なんだろう、ドッキリにでもかけられているんだろうか。 「侑司」 「は、はい」 遥さんの顔がゆっくりと近づき、触れるだけのキスをされた。 「俺の覚悟と誓い。重いだろ」 頬に触れる遥さんの手が微かに震えている。 「兄ちゃんにも言われたよ、重いって。 付き合ってまだ一年にも満たないし、お互いのこともよく知らない、早すぎるって。 でもこれから先どんなお前を知っても別れるって選択肢が俺の中に出てくる可能性はないって思う。 お前から………別れるって言われて離れることになってもそうなったら俺が一人で住むなり売るなりすればいいだけだし。 だからお前は背負わなくていい…」 「遥さんっ」 抱き締めると全身が細かく震えていた。 泣きそうだ。 愛しくて馬鹿でたまらなく可愛いこの人を手放したかつての恋人達に言ってやりたい。 あんた達こそ馬鹿だと。 俺は絶対に離さない。 「誕生日プレゼントにしては、規模がでかすぎです」 「…ごめん」 「家具とか一緒に選びたかったのに」 「……ごめん」 「それにプロポーズは俺からしたかったです」 「ぷ、プロポーズじゃないっ」 「え、プロポーズでしょ、これ」 「ち、違うっ」 「じゃあ、その時がきたら俺からプロポーズさせてください」 ぐずっと鼻を啜る遥さんが小さく頷いた。 「重くなんかないです、すっげー、今までで一番気持ちのこもった最高の誕生日プレゼントです」 「………管理費と修繕積立金、食費と光熱費は折半だからな」 「そこは俺に出させてくださいよ」 「ダメ。年に一回旅行に行きたいから貯金頑張るの、二人で」 遥さんの鼻がまたぐずっと鳴った。 「……はい」 二人で。 その言葉が本当のプレゼントかもしれないです、俺にとっては。 色々な気持ちが込み上げて骨が軋むほど強く抱き締めてしまった俺を遥さんが呻きながら膝蹴りした。 大袈裟に痛がる俺に心配そうに慌てた顔で近寄る遥さんをまた抱き締めた。 絶対に離しません。 絶対に。 まだ口に出せないプロポーズめいた思いを心の中で何度も繰り返した。

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