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俺は何度惚れればいいですか。
「別にエッチうんぬん言ってた訳じゃないんだからいーじゃんか、なぁ?」
「いえ、あの、すいません…」
「そっ、そういう問題じゃないだろ、人の目のある所でいちゃいちゃするのが兄ちゃんは控えるべきだと」
「はい、すいません…」
「いちゃいちゃって、チューしてたわけじゃないもん、なー?」
「ちゅ、ちゅーとか言うな!」
「本当にすいません……」
「お取り込み中すみませんが、お飲み物のご注文よろしいですか…」
個室のドアが開いていて、片膝を着いた店員さんが申し訳なさそうに上目遣いで声をかけた。
いつからいたんだろう。
「侑司ビール?俺もビール。兄ちゃんは?」
「カルピスチューハイ…ください」
失礼しましたと出て行く店員さんを見送り、遥さんがトイレと言って席を立った。
「新生活は、順調なのか?」
薫さんが心配そうな顔で遥さんが出て行ったドアを見つめながら聞いてきた。
「はい、色々とお力添えをありがとうございました」
「また……何かあったら連絡して」
おずおずと携帯を差し出す薫さん。
画面には薫さんの携帯番号とアドレスが表示されている。
礼を言って登録した。
「遥の資産はこれからも俺が管理するから大きい金はそこから動かせる。例えば車とかマンション買い替えとか」
「え、待ってください!マンション一括購入したんですからもうないでしょう?」
焦る俺をきょとんとした丸い目で薫さんが見つめる。
「貯金ゼロになるような買い物を俺が勧める訳がないだろう。
あいつの貯金はちゃんとまだ八桁ある」
一、十、百、千、万……………………
指折り数えて手が止まった。
止まった手が震えた。
「二人の老後資金にするからこれからも頼むって遥に言われたからしっかり管理するよ。
それにしてもあいつの野生の勘は凄いぞ。
俺の持ってる株もほとんどが遥がこれいいって選んだ物だからな」
驚くほどの能天気なのはそういうところでの勘の良さの裏返しなのか…
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