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※俺だけでは不足ですか。

たった一晩離れて寝ただけ。 それだけなのにこんなに欲しいのは何故だろう。 マンション購入と引っ越しで夏は知らないうちに過ぎていた気がする。 気が付けば朝晩はひんやり寒くなってきたし、玄関は風が入ってきて肌寒い。 靴を脱いで部屋に入り、ソファでもベッドででも好きなだけ貪り合えばいい。 いいのに、そこまでが待てない。 昨夜できなかったちゅーの分を埋めるように侑司の唇が俺の唇を塞ぐ。 舌が濡れた音を立てながら入ってくると鼻呼吸だけではすぐに苦しくなる。 時折唇を離し息をし、またすぐに唇を重ね合った。 深く濃厚なちゅーが重ねるだけのちゅーに代わり、名残惜しそうに侑司が唇を離す。 「取り敢えず飯食うか」 「…はい」 スーパーの袋から投げ出された惣菜や弁当のパックが床で鞄と一緒に転がっている。 パックを袋に入れ直し、袋を持ってリビングに向かう。 侑司は2つの鞄を持って寝室に行った。 ダイニングテーブルに惣菜や弁当のパックを並べながら手が止まった。 飯より欲しい物がある、と身体が鳴いている。 わかってるよ、そんなこと。 飯も風呂も、たまにはそっちのけで動物のように求めてもいいのか。 自問自答を繰り返しながらも足が寝室に向かう。 リビングからの灯りが届くだけの暗い寝室の奥のウォークインクローゼット。 そこで侑司がスーツを脱いでいた。 ジャケットを脱ぎながら入ってきた俺を見て侑司が柔らかく笑った。 侑司はスラックスも脱ぎ、Yシャツのボタンを外している。 ジャケットとネクタイをハンガーにかけてから、侑司に近づき見えている肌に手のひらを滑らせた。 「遥さん?」 残っていた2つのボタンを外し、下着の上から股間を揉んだ。 股間を見て思わず噴き出すと侑司がちょっと、と抗議の声を上げた。 下着の股間部分にはチンアナゴが描かれている。俺が侑司に買ってきた下着だ。 襲いかかりそうだった欲情が少し収まった。

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