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俺はおちおち眠れません。

「遥さん、綺麗……」 那奈がぽそりと零した。 うんうん、そうだろ。 俺の遥さんは綺麗で可愛いくてかっこいいんだ。 「綺麗って女性に対しての褒め言葉だよ」 遥さんは照れたように眉を下げるが、事実なのだから照れることはない。 照れる遥さんもまた格別に可愛いのだが。 「本当に男?ちゃんと付いてる?」 「那奈!!」 ふはっと笑った遥さんが那奈ちゃんて面白いねと言ってからニヤリとする。 「もちろんちゃんと付いてるよ、なぁ?」 えぇ、立派なのがしっかりと。 真面目に答えようとした俺の靴が思い切り踏まれ変な声が喉で止まった。 「え、今の何、ウシガエルが車に轢かれた?」 那奈が窓の外をキョロキョロしている。 「那奈ちゃん、肉が焦げるよ」 「上カルビ!!」 網にかぶりつく勢いの那奈に顔を顰めた。 「お前、意地汚い」 「仕方ないでしょ、おにぃと違って貧乏なんだから」 「俺だって至って普通の生活だよ、上カルビなんて奢りでしか見たことないのに」 「えー?稼ぎの少ない男とかないわーないない、ないわー」 「ないない連発するな!」 ふはっと隣から笑いが聞こえた。 遥さんが肩を揺らしながら笑っている。 途端に恥ずかしくなった。 「すいません、こんな妹で」 「こんな妹って何よ!これでも私、さくら歯科のマドンナって呼ばれてんのよ!」 「マドンナ!?目の腐った患者さんしか来てないんじゃないか、そこ。歯医者より眼科通わないと」 「はぁ!?お父に言い付けてやる!」 「言い付けるってお前幾つなんだよ」 「あのー………」 申し訳無さそうな声に三人が顔を向けると。 店員がその声と同じように申し訳なさそうな顔で立っていた。 「他のお客様もいらっしゃいますので、もう少しお声を落としていただいてもよろしいでしょうか…」 「「すいません…」」 那奈と一緒に謝る。 店員さんが去り、那奈を睨むと那奈がテーブルの下で俺の脛を蹴った。 そんな俺たちを見ていた遥さんが噴き出した。 腹を抱えて笑っている。 泣きながら笑っている。 俺と那奈は顔を見合わせて噴き出す。 たまには二人じゃないこんな時間があってもいい、そう思えた。

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