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俺の特別はあなただけです。

抱きたい。 侑司の顔に書いてある。 気がするんじゃなくて、確信。 きっとこの後名前を呼ぶ声はいつもより熱っぽく、ちゅーするために俺の顎を持ち上げる。 「遥さん…」 ほら、きた。 「やだ」 「え?」 侑司の手が顎に触れる前に振り返り言ってやると侑司がカチリと動きを止めた。 「分かってるけど、一応聞く。何?」 「いや、あの、イチャイチャしたいなぁ、と」 「イチャイチャってどれくらい?ちゅー?」 「ちゅーもですけど、もうちょっと」 「身体触るの?」 「触りたいです」 「やだ」 「え?」 侑司の顔が改めて固まる。 「な、なんで?」 なんで? それは怒っているから、だ。 でもそれを言ってやるのはなんとなく悔しいから言わない。 イチャイチャする気分でもないからしない。 「遥さん、何か怒ってます?」 「うん」 「えっ。一体何に」 「自分の胸に手当てて考えてみろ」 いつものように侑司の脚の間に坐り甘やかされていれば気分も落ち着くかもと思ったが、そうでもない。 脚の間からどいて、侑司を見ると本当に胸に手を当てて考えている。 マズイ、ちょっと笑ってしまった。 慌てて元の拗ねた、いや、間違った、怒った顔に戻してから風呂に入りにいった。

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