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俺の特別はあなただけです。
「これ、遥さんのですよ」
「は?」
二人共がぽかんと口を開けた間抜けな顔でお互いを見つめた。
「お前がもらったんだろ?」
「違います、遥さんに渡してもらえませんか?って渡されたんです」
「はぁ?そんなの断わればいいだろ」
「そうしたかったですよ!」
侑司は正座のまま俺を見上げる。
「遥さんは俺のものですって言いたかったですけど、遥さんのいないところで言うのは違うと思ったんです」
侑司の手が俺の手を掴んだ。
「どうしてもって、渡すだけでいいからって必死にお願いされて…思う気持ちはわかるから…」
俺だったら渡しただろうか。
見てない、知らないなら、と隠し通したかもしれない。
この目に俺以外を写して欲しくない。
この手が触れるのは俺にだけでいい。
いつの間にこんなに強欲になったんだろう。
侑司の前にぺたんと座りこんで抱きついた。
首に腕を回して強く抱き着き顔を擦り付ける。
「勘違いして怒ったりして、ごめんなさい」
「誤解が解けたんならいいですよ」
大きな手がトントンと背中を叩く。
ぎゅっと強く抱きしめられたと思ったら侑司は俺を抱えてソファにどかっと腰を降ろした。
侑司の膝を跨ぐような格好になっても俺は抱きついたまま。
「侑司………しよ」
誘うように侑司の首筋に唇をそっと押し当てた。
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