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俺が家族になります。

好きな人の家族なら同じような気持ちで好きになれる。 これまでは漠然とそう思っていた。 あまりにも俺は浅はかだったと思い知ることになる。 大型連休を前に遥さんの予定を聞いた夜。 遥さんがあまりにもあっけらかんと言ってのけたので、俺は深く考えなかった。 「遥さん、連休どうするんですか?」 「兄ちゃんとばあちゃんの墓参り行くくらい」 「あ、俺も行っていいですか?」 「いいけど、お前実家帰んないの?」 「帰らないですよ。遥さんがいるのに」 遥さんの地元は隣町で、俺の実家はここ。 いざ帰ろうと思わなくてもすぐに顔を出せる。 それに今帰るとやたらうるさいおっさんみたいな妹がいる。 「兄ちゃん、連休、彼女と旅行行くから墓参り連休終わりにしたいって。 先に二人で行く?」 薫さんとラインしていた遥さんが顔を上げて聞く。 「薫さん、彼女いたんですか!?」 びっくりした俺の声に遥さんがびっくりしている。 「そりゃー兄ちゃんだっていい歳なんだから彼女くらいいるよ。結構長いよ、付き合って」 「どんな人なんですか」 うーん、と考えた後、遥さんは真顔で答えた。 「見た目はレッサーパンダなんだけど中身がバッファローみたいな人」 瞬きが追いつかない。 光の速さで瞬きをした気がする。 「えぇと、それは、一体どうゆう…」 「例えて言うなら、真由ちゃんの見た目で中身が響子さん」 「あぁ…」 一瞬で理解してしまった。 響子さん、すいません。 「尻に敷かれすぎて家では煎餅布団みたいな扱いになってる」 ぶはっと噴き出してしまった。 あの薫さんが。 「飴と鞭の使い方が秀逸なんだよ、華さんは。兄ちゃんが介助犬に見えるもん、俺」 まだ見ぬ華さんと横にぴったりとお座りして寄り添う薫さんを想像してまた噴き出した。 「じゃあ実家には帰らないんですか?」 この時瞬きをしていたら見逃していただろう、ほんの一瞬遥さんの顔が曇った。 え、としっかりと目の中に捉えた遥さんはいつもの遥さんで、見間違えたのかと思えてしまう一瞬だった。 「兄ちゃんは顔出すかもしれないけど、俺はしない」 里香さんの件か。 重たくなる空気を覚悟して聞いてみる。 「ずっと、このままなんですか」 遥さんが苦笑いして俺の髪をよしよしと撫でる。 そんな顔させてごめん、と謝りながら。 そして答えない。 答えない遥さんが誰よりもこのままなのかと誰かに答えを出して欲しそうに見えて胸の奥が痛んだ。

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