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俺が家族になります。
連休に入ってすぐ天気が崩れ、漸く晴れた連休四日目、遥さんに付いておばあさんの墓参りに行った。
賑やかな街を過ぎ左右どちらを見ても田んぼに代わるニ時間程度遥さんの運転する車に揺られ、静かな田舎のお寺に着いた。
入り口はいきなりの急勾配の坂があり、お年寄りのための手摺りを眺めながら息を切らし上がると、目の前に大木がそびえ立ち迎えてくれた。
大木の右手には古いけれど立派な本堂があったが、物音もなく静かだ。
左手には細い道が緩やかな坂を登るように伸びている。
遥さんに導かれ左手の道をのんびりと登っていくと、途中に山肌を降りるように水が落ちてくる場所にバケツや箒、ヤカンが幾つも置いてあり、こじんまりとした水道が設置してあった。
遥さんが持っていたシキミを俺に渡し、バケツに水を汲む。杓子をバケツに突っ込むとまた細い坂道を会話もなく進む。
両側は山でそびえ立つその山に隠されるようにいくつもの墓石が並んでいた。
並んだ墓石の一番左手前の一際立派な墓石に遥さんが寄って行く。
枯れたシキミを抜き取り、新しいシキミを差し込む。
水を足してから墓石にも水をかける。
遥さんの表情は穏やかだ。
持ってきていた線香に火を付けると遥さんは腰を降ろし手を合わせた。
「ばあちゃん来たよ、一年ぶり」
会話を邪魔しないよう、少し後ろに下がり俺も手を合わせた。
静かな静かな、声に出さない会話が続く。
遥さんがおばあさんに俺を紹介してくれているようで嬉しかった。
瀧田侑司です。
遥さんを大事にします。
俺も口には出さずにお墓に向かって頭を下げた。
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