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俺が家族になります。

水を汲んだ水道のある場所に戻ってくると遥さんは借りたバケツと杓子を丁寧に洗い流してから片付ける。 お寺を見守る主のような大木をそっと撫でてから、急勾配の坂を慎重に降りた。 近くの駐車場に停めてあった車に乗り込むと、遥さんはシートに身体を凭れさせ深く息を吐いた。 「まさか鉢合うとはな。ごめん、嫌な思いさせて」 いいえ、と首を振った。 「俺こそすいません、余計なことを言ってしまって」 「余計なことじゃない、嬉しかった」 遥さんの笑顔に泣きそうになった。 車のエンジンがかかる。 来るときは気付かなかったが、お寺自体が坂の途中にあったようで、車がゆるゆると坂を下っていく。 両脇の道に背の低い家が並ぶ。 玄関の軒先やベランダに野菜の干してあるのや、魚を干す網があるのが見える。 本当にのどかな町だ。 平坦な道に戻ったなと思っていたら車が道路の脇に止まり、遥さんが車を降りた。 自販機で缶コーヒーを買った遥さんが車に戻り俺に手渡すとまた車がゆっくりと走り出した。 ゆるやかな長い坂の終わりには海があった。 漁港はセリも終わり静かで誰もいない。 遥さんは車を止め窓を開けてからエンジンを切った。 「昔話する?」 はい、と返事をしてから缶コーヒーを開けて手渡した。

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