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俺は演技が下手くそです。

汗をかいた背中を侑司が優しく撫でる。 その手が下に下に下がっていくのを感じながらほんの少し上がった呼吸を誤魔化すように息を吸った。 「なぁ、考える楽しみ奪ってもいい?」 「え?」 「誕生日プレゼント」 肩越しに侑司を振り返ると慌てた顔を崩しながら笑った。 「やっぱりバレてました?」 「まぁな」 兄妹の仲が悪化しないように那奈ちゃんのことは伏せておいた。 「欲しい物があるんですか?」 侑司が俺の隣に寝転ぶ。 髪を撫でる手に擦り寄った。 「高いんだけど」 「何ですか?」 「ハーレーダビッドソン」 「ハ!?ハーレー!?」 「の、縮小プラモデル?みたいなヤツ」 あぁ、と侑司がホッとしたように緩ませた唇にちゅーをすると、答えるように侑司の唇が俺の唇を食む。 「プラモデルみたいなヤツだけど10万近くするの」 「じゅっ!?」 驚いたり笑ったり忙しい侑司が可愛い。 可愛くてたまらない。 大好きだ。 「プラモデルとか作ったことなくて、大人になってから作ってみたくても中々いいお値段するし手が出せなくて。 一緒に買って作ってくれない?」 「…はい」 嬉しそうに笑う侑司に俺も釣られて笑う。 「お互いの誕生日ごとにそういうの増やしていく?車とか戦闘機とかたくさんあるだろ?」 「いいですね、作る楽しみにコレクションしていく楽しみがありますね」 俺は作る楽しみや集める楽しみより、お前と何かを一緒にできるってことの方が楽しみなんだ。 きっと大雑把な俺にあーだこーだ文句を言いながらも苦笑いして助けてくれる。 俺の世話を嬉しそうにやってくれるお前を見るのが好きなんだ。 「侑司、好きだよ」 口に出すと意識しなくても笑顔になっていた。 笑った口に侑司がちゅーをする。 「俺の方がもっとずっと好きですよ」 抱き締められて裸の身体がひたりとくっついた。 「おかわりしてもいいですか」 いいよ、の代わりに頬にちゅーをすると侑司が軽く笑った。 俺の誕生日の翌日、テレビの横に立派なハーレーが出来上がり飾られていた。 大切に作られたハーレーは誇らしげに輝き、でかいテレビよりも存在感を示している。 寝不足の恋人の頭を抱き締め髪を撫でる。 侑司の誕生日の戦闘機も頑張ってねと額にちゅーをすると困った笑みを浮かべながらもはいと可愛い返事とちゅーが返ってきた。 幸せだよ。 好きだよ。  そう言うと俺もです、と嬉しそうに幸せそうに笑う侑司になぜか涙が溢れた。 子供をあやすように俺を膝の上に抱き上げ背中をトントンと叩く侑司。 悲しくない涙はしばらく止まらず、侑司は楽しそうに鼻唄を歌いながらずっと背中をトントンと叩いていた。 離さないでと独り言のように呟いた声は侑司に聞こえたかな………

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