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俺は猛獣使いにはなれません。
月に一度の食事会、今夜その食事会に一人新顔が混ざっていた。
薫さんの彼女、華さんだ。
どうしても会ってみたいと俺が言い出し、何故かごねまくった遥さんに頼みこみ、それがめでたく叶った訳だが。
少し遅れて居酒屋に現れた俺達を見ると華さんは薫さんと共に立ち上がり出迎えてくれた。
「初めまして、奥田華と言います」
ニコリと笑った華さんはとても可愛らしい人だった。
背もそれほど高くなく、顔も手足も小さい。
中身がバッファローだと聞いてなければ完全に警戒心は持たずに接していただろう。
「遥くんも久しぶりやね、うじうじくんは卒業できたん?」
「うじうじくんはやめてよ、華さん」
だから会わせたくなかったんだよ、と遥さんが小声で呟いた。
「あの頃は見れたモンやなかったけど、良かったやん、見れる見れる」
カラカラと笑う華さんに開いた口が閉じられない。
遥さん、バッファローや響子さんどころじゃないじゃないですか。
この人ライオンでしょ………
「また物凄いイケメン捕まえて。で?どっちが上なん?」
これはダメだ。
一刻も早く酒を投入しなければ。
薫さんは何がそんなに嬉しいのかニコニコしながら華さんが話すのを聞いて頷いている。
「兄ちゃんはな、華さんの話す方言に惚れたと言っても過言ではないから」
関西弁とも違うニュアンスの喋り方。
確かに可愛らしいが、話す内容がまるで可愛くない。
そこに頼んだ料理がポツポツと届き始める。
遥さんと俺はビール、薫さんはカルピスチューハイなのに、華さんは焼酎のロック。
この見た目でまさか酒まで強いのか。
縋るように遥さんを見るとうんと項垂れるように頷いた。
「諦めろ、ザルだから」
諦めることは他にもありそうだが、はいと返事をして乾杯した。
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