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俺と育ててくれますか。

駅まで5分少し。 全力で走るとさすがに息が切れる。 場所がてら仕事帰りの客が多い中、部屋着に生乾きの髪で入ってきた男に視線が集まる。 「侑司」 頼りなげな少し濡れた目をした遥さんが俺を見て駆け寄ってきた。 「帰りましょう」 「…うん。ごめんなさい」 項垂れて謝る遥さんのつむじに堪らず思わず唇をつけた。 ほとんど走るように忙しなく部屋に戻るとリビングまで待てず玄関で遥さんを抱き締め深いキスをした。 「あんまり心配させないで下さい」 「ごめんなさい……」 手を引いてリビングのソファに遥さんを座らせ、遥さんの前に膝をついた。 「これだけ一緒にいて飽きないってことは愛はちゃんと育ってるんです。朝も昼も夜も寝てる時も、俺の遥さんへの愛は出会ってからずーっと育ってます。 遥さんは違うんですか?」 ううん、ううんううん、と首が何度も横に振られる。 「でも寝てる時は育たないだろ」 「育ってますよ」 遥さんを見上げ笑ってみせる。 「たまに遥さんに腕を食べられて目が覚める時があるんです。 その時遥さんのお腹というか胃がきゅるーって動いてるんですよ。 遥さんは寝てるのに細胞は動いてて遥さんが起きて動くために働いてるんだなーと思うと細胞レベルまで愛しいです」 「ちゃんと育ってるんだな」 「そうです、わざと離れたりしなくてもちゃんと育ってます」 そう言う俺を見て遥さんがニコッと可愛い笑顔を見せた。 「これからも育つ?育ててくれる?」 「もちろんです!毎日育てます」 遥さんがソファから飛び降りるように俺に抱きついてくる。 「じゃあもう離れない。ずっと一緒にいる」 「はい」 遥さんを抱き返し首筋にキスをした。 離れていたのはほんの僅かな時間だったが、遥さんはいつまでも離れず俺に甘え続けた。

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