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俺、正直になっていいですか。

侑司は少し残念だ。 すごくかっこいいのに、無頓着なところがある。 服は好きで買い物に行くと必ず服や小物を見てるし、ネットでもポチポチ買っているが、 癖のある髪は伸びてきてもそのままだし、髭の剃り残しもしょっちゅうだ。 今朝もまた剃り残しを発見。 俺の方が背が低いから見えるってとこもあるが。 「侑司、ここ髭残ってる」 「え、どこですか」 ここ、と言って顎の下を指で押してからちゅ、とちゅーをした。 「ここ、剃りにくい上に見えにくいんですよ」 「俺がやろうか?」 そう言うとお願いします、と可愛い笑顔が返ってきた。 首を逸らせ仰け反る喉に変な気持ちになったのを隠し、剃刀を当てる。 慎重に剃刀を動かし剃り残しを落とす。 右、左と確認してからよしと言うと、ありがとうございますとまた可愛い笑顔をくれた。 「髪もそろそろ切りに行ったほうがいいかも」 鏡を見ながら前髪を掻き上げる侑司。 見慣れた横顔のはずが、どくんと心臓が音を立てた。 「遥さんに髪撫でてもらうのが好きなんで、あんまり短くしたくないんですけど、さすがに切らないとマズイですね。接客業だし」 襟足にかかる髪をわしゃわしゃと掻き混ぜる大きな手を見つめる。 この手が昨夜俺の身体を隙間なく撫でた。 髪を撫で、頬を撫で、首筋から胸へと滑らせて少し焦らした後ご褒美をくれるように突起を摘む。 「遥さん……」 欲情を含んだ甘い声で何度も呼ばれ、それに喘ぎながら応えた。 好きすぎておかしくなっている。 侑司と付き合う前は月に二回ほど身体を重ねれば満足だった。 負担がかかるのは女性だという思いもあったが、性欲というよりは気持ちの確認の意味で触れるというほうが大きかった気がする。 我を忘れるなんてこともなく、夢中というほど没頭することもなかった。 侑司に抱かれてから欲しいと度々欲情している自分に驚く。 他の誰かとか、ムラムラして欲しい、ではなく、ただ侑司が欲しい。 触れて欲しくて、もっと奥まで侑司しか知らない場所を埋めて満たして欲しい。 侑司のふとした仕草に煽られ、自分のはしたなさに赤面する。 俺の身体はどこかおかしいのかもしれない。

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