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俺、正直になっていいですか。

仕事を終え部屋に戻り、飯を食い、風呂に入る。 ソファに座り一日の終わりを感じ漸く息を吐いた。 侑司のリラックスした表情を横目にしながら勝手に口が開いた。 「なぁ、お前って一人でしてんの?」 侑司が飲んでいた水が水鉄砲のように口から吹き出した。 聞くタイミングを測り間違えた。 あわあわと二人拭いて終わると侑司が改めて目を見開く。 「あの、それは自慰のことを聞いてますか」 「うん」 「えっと、………はい」 「いつ?ずっと一緒にいるのにいつしてんの」 「それは、その、風呂、とか」 「足りない?それは俺が慣れてなくて満足できてないから?」 「違いますっ!」 語尾は被っていた。 物凄い勢いで否定してくれた。 それだけでなんとなく嬉しくなった。 「あの、俺、毎日朝昼晩いつでも遥さんを抱き締めたいしキスもしたいんです。でもするともっとって欲が出て、欲が出たらそれを押さえ込む自信もあまりなくて。 遥さんに負担になるのはわかってるから、その、自分で…」 すみません、と謝る侑司を抱き締めた。 悔しいけど、見た目レッサーパンダの言う通りだった。 「俺がいるのに一人でしたりするなよ」 「でも毎日とか仕事もあるのに無理でしょう?」 「毎日したいの?」 「仕事がなかったら毎日お誘いしてます」 侑司の手が俺の背中をそっと撫でる。 「無理なら無理って言うから一人でしないで」 「でも、遥さん…」 身体を離しそうになった侑司の首に腕を回して再び抱き寄せる。 「欲しいの、俺も。だから、一人でしないで、抱いて…」 何も答えてくれない。 やっぱり引かれた? 淫乱だと呆れられた? 一気に鼻の奥がツンとして目の中に水が溢れる。 瞬きをしただけでその水は粒になって頬を転げ落ちた。

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