124 / 211
俺、正直になっていいですか。
仕事を終え部屋に戻り、飯を食い、風呂に入る。
ソファに座り一日の終わりを感じ漸く息を吐いた。
侑司のリラックスした表情を横目にしながら勝手に口が開いた。
「なぁ、お前って一人でしてんの?」
侑司が飲んでいた水が水鉄砲のように口から吹き出した。
聞くタイミングを測り間違えた。
あわあわと二人拭いて終わると侑司が改めて目を見開く。
「あの、それは自慰のことを聞いてますか」
「うん」
「えっと、………はい」
「いつ?ずっと一緒にいるのにいつしてんの」
「それは、その、風呂、とか」
「足りない?それは俺が慣れてなくて満足できてないから?」
「違いますっ!」
語尾は被っていた。
物凄い勢いで否定してくれた。
それだけでなんとなく嬉しくなった。
「あの、俺、毎日朝昼晩いつでも遥さんを抱き締めたいしキスもしたいんです。でもするともっとって欲が出て、欲が出たらそれを押さえ込む自信もあまりなくて。
遥さんに負担になるのはわかってるから、その、自分で…」
すみません、と謝る侑司を抱き締めた。
悔しいけど、見た目レッサーパンダの言う通りだった。
「俺がいるのに一人でしたりするなよ」
「でも毎日とか仕事もあるのに無理でしょう?」
「毎日したいの?」
「仕事がなかったら毎日お誘いしてます」
侑司の手が俺の背中をそっと撫でる。
「無理なら無理って言うから一人でしないで」
「でも、遥さん…」
身体を離しそうになった侑司の首に腕を回して再び抱き寄せる。
「欲しいの、俺も。だから、一人でしないで、抱いて…」
何も答えてくれない。
やっぱり引かれた?
淫乱だと呆れられた?
一気に鼻の奥がツンとして目の中に水が溢れる。
瞬きをしただけでその水は粒になって頬を転げ落ちた。
ともだちにシェアしよう!