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好きになったら怖いですか。
リビングで携帯を取り出しかけたくはないが仕方ないと言い聞かせ[おっさん]と登録してある那奈の通話ボタンをタップする。
呼び出し音までなんとなくおっさん臭が漂っている気がする。
『なにー?』
「遥さんが熱出した。何すれば楽になる?」
『何度?』
さっきの体温を伝えると地を這うような低い声のおっさんが登場しはぁーーー?と唸られた。
『微熱じゃん、子供じゃあるまいし』
「これから上がるかもしれないだろ」
『上がったら上がった時に動けばいいじゃん』
「けど…」
『心配しすぎ!ウザい!』
電話が切られた。
かける相手を間違えた。
母に電話をしたが、様子を見なさいと言われ俺のすることは様子を見るだけになった。
寝室にそっと入り、すやすやと眠る遥さんの寝顔を見つめる。
苦しそうではないことが救いだ。
髪を撫でたい。
頬に触れたい。
見ているとうずうずしてくるため、気を逸らすためにやりたくもない携帯ゲームをやることにした。
………………飽きた。
ダメだ、5分もしないうちに飽きた。
遥さんを見ているのは何時間でも平気なのに。
携帯をそこらへんに放り出してまた遥さんの寝顔を見つめる。
好きです。
好きです、遥さん。
これから先、一緒に過ごす中でまた体調を崩す時があったら、
その時看病するのも俺にさせてください。
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