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好きになったら怖いですか。
髪を撫でる優しい手。
名前を呼ぶ愛しい人。
寝てたと気付き身体を起こすと遥さんが微笑んで俺を見ていた。
遮光カーテンで光が入らない寝室では時間がわからない。
「身体痛くない?」
ベッドに凭れるようにして寝ていた俺を心配してくれている。
「遥さんは?熱どうですか?」
首筋に手をやると遥さんの手が重なった。
「大丈夫、下がってる」
笑った遥さんが俺に向かって腕を広げる。
ベッドに上がり重なるように抱きしめると後頭部を撫でられた。
「看病ありがとう」
「看病らしいこと何もしてないです」
「心配して側にいてくれるのが看病だよ」
俺の心情を汲み取ってそう言ってくれている。
遥さんのこういう所もたまらなく好きだ。
好きすぎて怖くなる。
もし、やいつか、なんて考えたくない。
俺は絶対に遥さんを離さない。
そう思うのにどうして怖くなるのか。
重ねた身体から何か伝わってしまったのか、遥さんは長い間俺を抱き締め、髪や背中を撫で続けてくれた。
遥さんの匂いに包まれ、漸く落ちつき顔を上げると遥さんがふはっと笑った。
「お前は本当見た目と違ってネガティブだよな」
「遥さんだって見た目と違って能天気で大雑把ですよ」
「隠してないで言ってみ?何考えてた?」
「……遥さんが好きすぎて怖くなったんです」
なんだそれ、と笑った遥さんはいつも通り究極に可愛い。
その笑顔を見ているだけでさっきまでのマイナスな思考が溶けていくように感じる。
チュと可愛いキスをされた。
「好きだよ、侑司」
またチュと角度を変えたキスをされる。
「不安になったら何度でも言うよ」
好きだよ、と囁く遥さんを抱き締める。
「不安にならなくても何度でも言ってください」
遥さんがふはっとまた笑った。
「ん、好きだよ」
「俺も好きです」
知ってる、と抱き締めてくれた腕の中で俺は少しだけ泣いた。
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