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俺はお前がいいんです。
コンビニではなんですから、と尚人に行きつけだという近くのショットバーに連れて行かれた。
一枚板の6,7人は座れる長いカウンターに三人並んで座る。
薄暗い店内でも侑司の表情が硬いのがわかる。
手の甲をそっと撫でると申し訳なさそうな顔で少し笑った。
尚人は店員と親しげな様子で言葉を交わし飲み物を頼む。
「侑司と、えーと、」
「水元です」
「水元さんは何にします?」
カクテルには詳しくない、無難にビールに逃げた。
侑司もビールを頼み、飲み物が揃ったところで尚人が乾杯とグラスを掲げた。
乾杯と同じようにグラスを掲げてから口をつけた。
なんていうビールかわからないが、苦味の少ない飲みやすいものだった。
「お二人はどういうご関係です?」
尚人の質問に侑司がグラスを見詰めたままで答える。
「会社の先輩。会社の飲み会の帰りだよ」
「へぇ、会社どこの何てとこ?」
「どこでもいいだろ、お前に話すつもりない」
普段タメ口で話す侑司を見ることがない。
会社ではもちろん、俺と話す時も敬語だ。
そのせいだけではなく、突き放すような侑司の話し方に尚人との過去が見え居心地の悪さにビールを煽った。
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