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俺はお前がいいんです。

「さっき言った恋人って侑司、ですか」 答えずに笑みを返す。 侑司も何も言わない。 「コイツ、重くないですか」 「重い?」 グラスを煽り空にし店員に新しい飲み物を頼んだ尚人が侑司をちらっと見てから俺を見る。 「束縛とかヤキモチとか、上手いのに性欲薄いし」 ふはっと笑いが出た。 「薄い?性欲が?」 一度出た笑いは収まらず、俺一人がぽかんとした顔の二人をよそに笑った。 「お前性欲薄くないよな?」 「は、遥さん」 「毎日したいって言ってたもん、あれ嘘?」 「嘘じゃないです!毎日したいです」 侑司がハッとした顔をして尚人を見る。 「わかった?君とだから性欲薄かったみたいだよ」 俺が微笑みながら尚人に言うと尚人は財布から金を出しカウンターに叩きつけるように置き店を出て行った。 「あーちょっとスッキリした」 ビールを飲むとさっきまでより旨く感じた。 「さっきのヤツと繋がりないんだろ?」 「はい、別れてから会ってないです」 じゃあいいか、と侑司の頭を撫でた。 「すいません、嫌な思いさせて」 「お前だって里香と会っただろ、お互い様だよ」 この歳まで何もないってことのほうが不思議だろ、と言うと侑司が少し笑った。 「全てに奔放な感じだったな、尚人くん」 「それが可愛く見えたんです、好きだって言われて」 実際付き合っている時もそうだった、と侑司は顔を歪めた。 他の人と関係を持つことに何の疑問も持たない尚人に振り回され疲れてしまった、と侑司が呟いた。

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