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俺はお前がいいんです。

侑司の髪をくしゃくしゃと撫でた。 「変えられなかったことがそんな顔にさせてんのか?」 そうかもしれません、と侑司が苦笑いする。 「俺は良かったよ、お前が尚人くんを変えてくれなくて」 え、と侑司が顔を上げる。 「尚人くんが変わってたら今も付き合ってたかもしれないだろ。そしたら俺はお前と付き合えてない」 カウンターの下でコツンと膝をぶつけた。 「俺は今のお前がそのままで好きなんだけど、それでもそんな顔すんの?」 侑司が顔をくしゃとさせて笑う。 「重くても?」 「もっとヤキモチやいてくれてもいいよ」 「あれこれ細かくても?」 「俺が大雑把だからちょうどいいんじゃない?」 「…性欲薄くなくても?」 「受け止めてやるよ」 頬をひたひたと叩いてニヤリと笑うと侑司もははっと笑った。 二人で飲み物の代金を払い店を出る。 人通りの少ない裏路地。 侑司を見上げてネクタイを引っ張る。 チュとチューをするとびっくり顔の侑司。 「俺は今のお前がいいんです」 はい、と答えた侑司の可愛い笑顔に目を伏せて顔を傾けた。 そっと重なった柔らかい唇をお互い食むようにしてから唇を離し額を合わせた。 「…好きだよ」 「俺の方がもっと好きです」 「早く帰って仲良ししよっか」 「はい!」 その前に、と侑司が俺の腕を引っ張り顎を持ち上げた。 もう一回だけ、と囁かれ重なった唇は甘いビールの味がした。

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