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俺といつか、の約束をしてください。
食後のコーヒーはびっくりするほど美味しかった。
喫茶店が開けるレベルだ。
本当に美味しすぎておかわりまでしてしまった。
華さんはすっかりレッサーパンダに戻り可愛い笑顔を振り撒いている。
コーヒーの豆やら焙煎やら、聞いてもよくわからない話を嬉しそうに話す華さんを薫さんもニコニコと見ている。
「華さん、これ」
薫さんがテーブルに一枚の紙を置く。
「今日これから出しに行こう」
薫さんの手で開かれた紙は婚姻届だった。
薫さんの名前は既に記入されていて、あとは華さんの名前だけだ。
これで何枚目なんだろう。
ふとよぎった考えを読んだように華さんが俺をジロッと睨んだ。
野生の勘まで備わっているんですか。
薫さんにペンを渡され、華さんが紙に手を置く。
ゆっくりと丁寧に書かれた名前は間違うことなく記入された。
「お疲れ様。ありがとう」
薫さんがそう言うと華さんの大きな目から涙がポロッと溢れ落ちた。
まさに鬼の目にも涙。
ポロポロと溢れ落ちる涙をティッシュで優しく拭き取りながら薫さんは優しい笑みを浮かべ華さんを見守っている。
これを見てもらいたかったのか、と遥さんが呟き、おめでとう、と遥さんは二人に声をかけた。
「ありがとう」
華さんは涙を溢れさせながらも俺たちに向き直り頭を下げた。
「遥くんと侑司くんも結婚できたらいいのにねぇ。子供がどうとか安定した生活がどうとか、時代も人も変わってきとるのに、なんで変わらんといかん物は望んでも変わらんのやろぉ。
ただ一緒におりたい、その想いを邪魔されよるようで悔しいわ……」
最後はしゃくりあげるほど泣きながら華さんが言った。
俺たちのために泣いてくれているレッサーパンダはこれまでで一番可愛いらしく儚げだった。
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