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※俺を一人にしないでください。

アラームを止め起きる。 セックスした朝はいつも腰がきゅんとする。 これをどう表現すればいいかわからない。 たぶん侑司にはわからない。 甘く疼くような、蕩けるような、おもいだして濡れるようなこの感覚を。 そっと息を吐き起き上がる。 横を見ると侑司がいない。 トイレか。 リビングに行っても人気がない。 急に怖くなって肌寒いリビングで自分を抱き締めるように腕で擦った。 玄関で音がした。 音を立てないようにリビングに入ってきた侑司は俺を見て驚いた顔をした後ふんわりと笑った。 「もうそんな時間ですか、おはようございます」 「………おはよ」 はい、とコンビニの袋を渡される。 中を見るとアイスと黒糖パンが入っている。 「目が覚めたから買ってきました。食べたかったんでしょ?」 「……ありがとう」 いいえ、と侑司が柔らかく笑う。 コンビニの袋をテーブルに置き侑司に抱き着く。 ぎゅっと強く抱き着くと侑司が慌てる気配がした。 「遥さん?」 「起きた時、側にいて」 「え?」 「お前がいなくて怖かった…」 ねぼすけでいいから、と呟くと侑司が笑いながら漸く俺を抱き締め返した。 「ごめんなさい、でも、俺が遥さんから離れるなんてあり得ないです」 「…うん」 おかしいよな。 呟いてから笑いが漏れた。 侑司の腰に置いた手がまだ少し震えていた。 「大丈夫です、ずっと側にいます」 落ち着いたと俺が言っても侑司はしばらく俺を離さなかった。 離れた時にはアイスはとろりと溶けかけ、パンは角がへしゃげていた。 アイスは冷凍庫に入れ、角をそのままに焼いたパンを二人で食べた。 俺はお前がいないともう生きていけないのかもしれない。 パンを齧る横顔を見詰めながら俺もパンを齧る。 俺のパンにはマーガリンが垂れるほど塗られていた。

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