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俺も癒やしたいんです。

夕飯を食べ終え洗い物を済ませると遥さんが一緒に風呂に入ろう、と言った。 普段はあまり一緒に入らない。 それは俺が色々と催してしまうからだ。 俺の手を引き風呂に行くと脱衣場で部屋着も下着もあっさりと脱ぎ先に風呂に入ってしまった。 変な期待はするな、とまだ項垂れたままの息子に言い聞かせるように呟き、俺も風呂に入った。 すでに髪を洗っている遥さんの後ろでかけ湯をして湯船に入る。 甘い匂いにむせ返りそうになっていると、髪を洗い終えた遥さんが立ち上がった。 いつもとは違い、俺の背中を押す。 「遥さん?」 「今日は俺がお前を抱っこする」 俺と湯船の間に身体を入れ、脚を伸し、脚の間に俺の身体を入れると腹に腕を回し後ろから俺を抱きしめた。 遥さんの胸に背中を預ける。 初めてだ。 何とも言えない気持ちだった。 「気持ちいい?」 「……はい」 遥さんの手が腹を撫でる。 「俺、お前にこやって抱っこしてもらうの大好きなの。 気持ちいいし、安心するし。 お前もそうかなと思って」 もしかしたら、癒やそうとしてくれているのか。 「俺ばっか甘えてるだろ。お前もたまには甘えろよ」 遥さんの頭が俺の肩口に乗る。 今洗ったばかりのシャンプーの匂いがする。 「俺の前までおにぃになることない。 お前は俺の恋人なんだから」 「………はい」 その日、いつもと違う位置で浸かる湯船で俺たちは長いことくっついていた。 甘やかされる心地よさと遥さんの思いが嬉しくて離れがたく、熱いお湯を何度も注ぎ足しては時折触れるだけのキスをしながらお互いを癒やしあった。

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