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俺の愛する人。
「それで用件は何だよ」
遥さんを抱き締め、髪を撫で、濡れた頬を拭いながら携帯に向かって話す。
「誕生日の件どーなったかなーって。遥さん、やっぱり来にくいよね」
「お前がいい歳して誕生日会するとか言うから」
「何言ってんの?幾つになってもおにぃの可愛い妹は私だけじゃん。祝ってもいいよって言ってあげてるのに」
ため息が出た。
那奈と話してるとため息がやたら出る。
「私が結婚してからの方が遥さん来やすいよね。あ、遥さんと私が結婚したらいーじゃん!一石二鳥!」
「それが一番ない」
「…包容力のない男ってないわー」
お前に使う包容力は持ち併せてない!と言うと、俺の腕の中の遥さんがふはっと噴き出した。
「取り込んでるから切るぞ!」
「はぁ!?電話代請求」
最後まで言わさず通話を終了させた。
「俺、那奈ちゃん好きだわ」
遥さんの手が俺の背中を回される。
ちゅ、と顎にキスをされ、胸に顔を擦り付けられた。
「子供みたいに口きかなくてごめんなさい…」
謝る遥さんの背中をそっと撫でた。
「悪いのは俺です」
ごめんなさい、と言うとうん、と頷いてくれた。
「那奈ちゃんの誕生日祝いには、俺はまだ行けない。
ご両親に話しがいってるならなおさら、友達ですとも言えないし」
「はい…」
「ちゃんと挨拶に行くなら準備する時間が欲しいんだ」
遥さんが身体を離した。
俺の顔をじっくりと見て、いつものようにニコッと笑った。
「それはまた今度ゆっくり話そう」
俺の頬を撫でる遥さんにはい、と返事をすると、遥さんはまた笑って頷いてくれた。
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