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俺の好きな季節。

恒例行事の会社の飲み会。 誠一さんと泰生さんが肩を組んで次の店にスキップする勢いで向かう背中を舌打ちしながら見送る真由ちゃんを宥める響子さん。 女性二人がタクシーに乗り込み帰るのを見送って振り返ると遥さんがいない。 キョロキョロと辺りを見渡しているとどこからか猫の鳴き声がした。 息を潜めその鳴き声の方へそっと近づく。 「お前この前からここにいない?昼間もいたろ」 にゃぁーんと返事のような鳴き声。 「お腹空いてない?誰かからご飯もらってんの?」 なぉん。 「あ、首輪してたんだ。誰かいい人いるんだな、良かった」 にゃーん。 「早く帰らないとその人が心配するぞ」 んにゃん。 チリンと小さい鈴の音が聞こえた後、細い路地から遥さんが出てくる。 「侑司」 俺を見て嬉しそうに笑い、駆け寄る遥さん。 「美人さんでした?ナンパしてたでしょ」 「あっけなく振られた」 ふはっと笑いながら遥さんが答える。 「俺の遥さんを振るなんて見る目がないですね」 「お持ち帰りして良かったの?」 遥さんの目が誘うように濡れる。 細い指が顎をなぞり首の後ろにするりと伸ばされる。 「ダメです。遥さんを愛でるのも遥さんが愛でていいのも俺だけです」 くくっと抑えた笑い声が耳元を擽る。 「じゃあ…帰って好きなだけ愛でて」 細い腰を抱き寄せる。 「いいんですか?本当に好きなだけ愛でますよ」 唇を耳朶に擦り寄せながら囁くと遥さんの身体がぴくりと揺れた。 「…お前になら何されてもいいよ」 耳がじわりと赤く染まる。 力いっぱい抱き締めそうになった俺のつむじにポツリと冷たい雫が落ちた。

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