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俺はこれまでで最高をあげたいんです。
最近になって侑司も外回りの仕事をするようになった。
しばらくは泰生さんに付いて勉強するらしい。
ニ、三ヶ月続いた面接&登録ラッシュも落ち着き、内勤は暇で仕方ない。
仕方ないのをいいことにプレゼント候補を探す。
服、ありきたり。
アクセサリー、つけてるの見た事ない。
趣味の物、……知らない。
そういえば、侑司の趣味を聞いたことがない。
那奈ちゃんに聞けばわかるかもしれないが、簡単に口を滑らせそうでおちおち聞けない。
「へぇーーーーーー…」
低い声に肩がびくっと跳ね上がった。
「仕事中にいい物見てるじゃない」
恐る恐る振り返ると響子さんが腕組みをして俺を見下ろしていた。
椅子をくるりと回され、仁王立ちしている響子さんを前に思わず膝を閉じた。
「デコピンでもしときたいとこだけど、紘都にプレゼントもらったとこだから勘弁してあげるわ」
ほぉーっと息を吐いた。
先週は響子さんの息子、紘都の誕生日で、プレゼントを贈っていたのだ。
はーちゃん、ありがとう!と満面の笑顔の動画を響子さんから送られ、保存するんですか、と口を尖らせる侑司を横目に大事に保存した。
「何、侑司くんに?」
置きっぱなしの携帯の画面を覗き込み響子さんが問う。
「ペアリングは?一番喜びそうじゃない」
うん。
響子さんの言葉に頷く。
それは最初に思いついた。
でも。
侑司の気持ちを縛ってしまわないか。
遥さんは俺のものです、そう言ってくれる侑司の気持ちが俺は単純に嬉しい。
侑司が俺に向ける愛情を重く感じることもないし、どれほど大事にしてくれてるかはよくわかる。
だけど、俺から同じことをすると、どうなんだろう。
ただでさえ、マンション購入という重い物を初っ端でやらかしている。
気にするなとは言ったものの、気にしない訳にはいかないだろう。
家賃や返済という大きな出費がない分生活はお互いに安定しているし、余裕もあり、マンション購入は後悔してない。
だけど、マンションという重いプレゼントをあいつに知られて、さらに指輪をプレゼントしたら、更に縛りつけてしまわないか。
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