182 / 211

俺はこれまでで最高をあげたいんです。

「遥くん、悪いクセがでてるんじゃない?」 響子さんが背中をポンと叩く。 「普段は腹が立つほど大雑把なのに、変なトコで臆病なんだから」 臆病…そうなのかも。 失いたくない。 でも、縛りたくもない。 でも…束縛したい。 矛盾だらけの自分に呆れ笑いが漏れた。 「喜ぶ物をあげたい。そうでしょ?」 優しい声を見上げると、細く綺麗な指が俺の頬を痛いほど引っ張る。 「アレコレいらないこと考えてないで原点に戻りなさい」 「……ふぁい」 長い爪が食い込むほど引っ張られた頬を撫でながら思う。 響子さんには本当に叶わない。 原点に戻る。 侑司が喜ぶ物。 喜ぶこと。 ………ダメだ、俺しか思い付かない。 色々考え悩んでみても、 思い付くのはアレしかなかった。

ともだちにシェアしよう!