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愛されすぎて泣けてきます。

その後も華さんはあの時はああだった、この時はこうだった、と昔話をしながらも泣き続け、スイッチが切れたかのようにコテンと寝落ちしてしまった。 クローゼットから予備の毛布を持ってきて眠る華さんにそっと掛けながら侑司がため息をつく。 「嵐みたいでしたね」 ん、と頷きながら携帯を鞄から取り出し兄ちゃんにラインを送る。 大事な奥さんはうちにいるよ、と。 今から迎えに行く!との返事を見届けて携帯を置いた。 ソファは華さんに占領されている。 ソファにそっと凭れるように侑司と並んで座り、漸く、漸く息をつけた。 「お腹空きましたね」 「だな」 「でもご飯用意してると華さん起きちゃいますよね」 「…だな」 そういえば。 侑司が思い出したように腰を上げキッチンに消えた。 遥さん、と小声で呼ばれキッチンに行くと。 来た時に華さんが無言で渡してきたらしい袋の中には色々なおかずが詰められたタッパーが幾つも入っていた。 きんぴらゴボウに肉じゃが、切り干し大根の煮物に肉団子、ほうれん草の白和えに1番でかいタッパーには炊き込みご飯。 侑司が微笑みながら箸を渡してくれる。 「立ったままでお行儀悪いですけど」 「いただきます」 小声で顔を見合わせて手を合わせる。 立ったまま、タッパーに入れたままのおかず、小声の会話。 ふはっと笑みが溢れた。 タッパーに入ったおかずもご飯もほんのりと温かかった。 美味しく優しい味のおかずを噛み締めながら少し溢れた涙を侑司が拭ってくれた。 俺、頑張れるよ。 小声で言うと、はい、と侑司も小声で答え笑う。 ソファで眠る化粧の剥げたレッサーパンダにありがとうと小声で告げた。

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