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俺と終わらない恋をしませんか。
庭でも見ててください、と紀さんに言われた正さんが庭に出るのを見てから紀さんがふふっと笑う。
「手伝ってくれたことは一度もないけど、ああやって自分も絶対座らないのよ。いくら座って待っててくださいって言っても、立ちたいから立ってるだけだ!って」
面倒くさい。
遥さんが顔を顰めて呟く。
何をする訳でもなくただウロウロと彷徨う正さんがいる庭が今日は静かだ。
今年に入ってから正さんは庭で子供たちに護身術のようなものをボランティアで教えるようになった。
それを聞いた遥さんと俺は心配になり、絶対見に来るなと言われていたのを破ってこっそり見に来た。
いつもと変わらないニコリともしない仏頂面で小さな子供たちを相手にああだこうだと護身術を教える正さん。
終わったのか、子供たちが一斉にお礼を言って頭を下げた。
さよーならーと挨拶をして帰る子供たちの頭を一人一人正さんが撫でる。
表情と同じで太くて厚い無骨な手は思っていたよりずっと優しく子供たちの頭を愛しそうに撫でた。
きっと…きっと、薫さんや遥さんにやってあげたかったこと。
それを今になってようやくしようと思えたように見えて胸が熱くなった。
こっそり覗いていた俺たちはすぐさまバレてしまい、書斎に閉じこもった正さんはその日顔を見せてはくれなかった。
紀さんに見送られ車にのり込みゆっくりと動き出す。
バックミラーにふと正さんが映る。
手を振る訳でもなく、また来いよと声を出す訳でもなく、ただそこに立ち、俺たちの車が去っていくのを見ていた。
思わず窓を下げ、また来ます!と叫んだ俺に正さんはほんの少し手を挙げて答えてくれた。
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