「遥！侑司！ちょっと来い」 庭の奥の方から正さんが呼ぶ。 また！と愚痴りながら遥さんが庭に出て正さんに食い付いた。 「なんで呼び捨てすんの！」 「お！お前の……なら、俺が呼んだっていいだろう」 「え？何て言ったの」 「パートナー！なんだろがっ！」 ぷいっと顔を背けた正さんの項は真っ赤に染まっていた。 「ぉ前の、パートナーなら……息子も同然なんだから、呼び捨てでもかまわんだろ……」 それに、と背を向けたままで正さんが続ける。 「今更息子が一人増えたところで何も変わらん！」 遥さんが俺を見上げる。 その顔は嬉しそうで泣き出しそうで驚いて、色んな感情が入り混じり複雑だ。 笑ってみせると俺の首に腕を回しぎゅっと抱き着いた。 「良かったな、侑司…」 涙声の遥さんを抱き締め返しながら胸が熱くなった。 「なっ！庭で何をやってるんだ！」 力まかせに無理矢理引き剥がされた俺たちは並んでお父さんに頭を下げた。 「遥さんを、生涯大切にします」 「……お前の気持ちなんぞ、もうとっくにわかってる」 仲良くやれ。 まだほんのりと赤い顔を背け、部屋に戻りながらお父さんがぽつりと言った。 厳つい背中を見ながら俺たちはこっそりと唇をくっつけた。 今日が本当のスタートかもしれませんね。 そう言った俺の頬にちゅ、とキスをして遥さんが笑う。 「これからもよろしくな、ダーリン」 家の外で薫さんの車のエンジンの音が聞こえた。 続いて、じいじーと結ちゃんの可愛い声が聞こえる。 緩ませまいと頬をピクピクさせながら結ちゃんを抱っこするお父さん。 いくら普通の顔してみたところで、結ちゃんにメロメロなのは皆にバレてるんですけどね。