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九空間目①

濃厚過ぎた夏休みが終わり、二学期が始まった。 苛められていた俺は学校に行きたくないという気持ちが人一倍強かったけれど、しかし憂鬱なだけの俺の学校生活は、今までよりも大分過ごしやすい環境へと変わった。というのも、帝が俺のことを苛めなくなったお蔭で他の人達も俺に関わることがなくなったからだ。もしかしたら帝が何か言ってくれたのかもしれないが、そこのところは聞いていないため詳しくは分からない。 だから今まで以上に空気のように過ごして、あまり良くないことかもしれないが気分が乗らない時は親が居ないため自分で電話をして学校を休んでいる。……多分だけど、そろそろ俺たちの家庭問題について学校側が何かしらに気付いて行動を移してくるだろう。 だけどそれについては、俺と帝だけでどうこうできる問題ではないので大人の助言を待ちたいと思う。 「おい、兄貴」 「…………んー?」 「こら。テレビばっかり見るな、こっち向け」 「ちょっと待ってよ。今いいところなんだから」 「大体兄貴“そいつ”が出る番組ばかり見過ぎだろ」 「……それは気のせいだろ」 「気のせいなわけあるか。隠そうとしても無駄だぞ、俺はそう鈍くねえからな」 「……べつに俺がどの番組見ようが帝には関係ないでしょ」 「関係大有りだ」 帝は機嫌が悪そうにそう言うと、テレビの電源を消した。もちろんのことながら、突然の帝の行動に俺は不満をぶつける。 「ちょ、ちょっと!俺見てるんだけど!」 「もうリビングで同じものを二回も見てるんだから、これ以上見る必要もねえだろ」 「…………そ、それとこれとは話が別だし……」 俺が何度も録画したものを観ていたことに帝は気付いていたようだ。変な物を観ているわけではないのに、なぜかアダルトビデオを鑑賞している最中に親に部屋に入られたかのような気恥しさを感じてしまう。 自室にもテレビはあるけれどサイズがあまり大きくないため、サイズの大きいリビングのテレビで喜々として観ていたのだが、帝はそれが気に入らないようだ。 「兄貴はこいつが好きなのか?」 「……す、好きじゃないしっ!」 「…………むかつく」 必死に否定をしたのだが、帝の機嫌は更に悪くなってしまった。 「む、むかつくってなんだよ?」 「言葉通りの意味だろ。たとえ芸能人だろうと好きな相手が他の男ばっかり見てるのは気に食わねえ」 「……気に食わないって」 つまりは、帝は神田さんに嫉妬をしているということなのだろう。だがそんなことを言われても困る。実物では見れなくなったんだから、テレビでくらい神田さんの姿を見させてくれ。

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