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十空間目⑭

力なく、だけど自然と溢れる笑みを浮かべてそう言えば、先程大量の精液を放ったばかりの神田さんのものが、俺の体内で再び質量を増した。敏感になり過ぎている俺の身体は、それだけでも物凄い快感を受け取ってしまう。だけど今はそういう状況じゃねーから、とジトッと睨みつけてやれば、思わず見惚れてしまうような甘い表情を浮かべた神田さんに抱き締められた。 「か、神田さん?」 「……はぁー」 「ど、どうかしました?」 「有希を堪能してるんだよ」 まるで甘えるかのように俺の胸元に顔を埋めて擦り付いてくる神田さんは、こんな状況にも関わらず、なんだかどことなく可愛い。怒られるのを覚悟で恐る恐ると彼の後頭部に手を置いて、そのまま髪の毛を撫でるように頭を撫でてみる。 「ふふっ」 だが神田さんは怒るわけでもなく何も言わず、俺の行動を受け入れてくれていた。その普通ならばなんでもないようなことでも今の俺にとっては嬉しくて、思わず笑みが零れてしまった。だってつまりは、それを咎められるような浅い関係ではなく、深い関係になれているということだ。 そうだ。俺たちは両想いなんだ。 まるで現実味のない夢物語のような出来事だけど、神田さんが俺に対して何度も何度も愛の言葉を投げ掛けてくれていたのだから、それは間違いないことだろう。 「(……つまりは、恋人同士ってことだよな?)」 これを世間が知れば、不釣り合いだと、身の程を知れと散々な罵声を投げつけられるだろうけど、それでもこれが現実なんだ。この幸せが現実なんだ。それを改めて実感して幸せに浸っていると、神田さんに顔を覗き込まれていたことに気付く。 「な、なんですか?」 「可愛い表情をしてどうした?」 「……か、可愛いは有り得ないですけど、ただ神田さんと両想いなんだと……恋人同士なんだと思うと嬉しくて、つい余韻に浸ってしまっていました」 もう自惚れでもなんでもない。今感じている幸せと、彼の温もりの全てが本物なんだ。 それが嬉しくて再び緩んだ表情を浮かべていると、神田さんのものを受け入れた状態だというのに、急に身体を起こされてそのまま強く抱き締められた。 「あっ、う!?ん……んん?どうしました?」 まるで対面座位の体勢のようになってしまったが、気のせいだと思いたい。 「……あ……んん、そろそろ抜きませんか?」 「無理」 「む、無理って……」 「有希があまりにも可愛いから、またしたくなった」 「…………、え?で、でも……」 「駄目か?」 「…………っ、」 体勢的に今は俺の方が高い位置に居る。 そんな状態のまま上目遣いでそんなことを言われると、言葉に詰まってしまう。

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