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 次に目が覚めたのは、見慣れた天井、見慣れた部屋。そう、あのマンションの寝室だった。 「……目が覚めましたか?」  明りと共に寝室に入ってきたのは、会いたくて会いたくて仕方がなかった、番、婀都理の姿。 「お、れ……」 「倒れたんですよ、バーで。お医者様からは、空腹の腹に酒……それも度数の高いあんなの入れたら倒れて当然だと……ご飯、食べてなかったんですか?それも、朝から……」  心配そうに俺の頭を撫でて来る婀都理に、俺は思わず涙してしまう。  一週間、離れていただけなのにその感覚が懐かしい。 「おまえが……おまえがいないから!!」 「彩里、さん?」 「おまえだって、おれに何にも言わない。俺が、どれだけ探そうと思っても、連絡の手段すらわからない……お前に、すてられたら、生きてけないのに……」  婀都理が、目を見開いた。  そして、俺を強く抱きしめてくれる。その近さに、婀都理の匂いがじかに感じられて、頭が呆然としてくるようにも感じる。 「すみませんでした。長く、離れすぎてしまいましたね」  ぎゅうっと抱きしめられて、長い沈黙の中、とても安らぎを感じてしまう。 「ねぇ、彩里さん」 「んぅ?」  酔っているような頭で、婀都理に返事をする。 「彩里さんは俺の事……好き、ですか?」  婀都理が、少し震えているのが分かる。ずっと、聞きたくて聞けなかったことなのだろう。  番となる前も後も、婀都理にこの気持ちを打ち明けたことは無い。 「好き、だ……側に、いて欲しい」  婀都理を好きだと自覚したのは、番になってから随分と経った頃だが、今思えば、出会ってから今まで婀都理を嫌いになった事は一度もない。それこそ、好きだな、と思う瞬間は有れど。  俺の言葉が余程嬉しかったのか、倍以上の力で抱きしめられてちょっと痛いし苦しい。  でも、それほど喜んでくれるなら言ってよかった、と心から思う。  普段から、言えはしないけど。  婀都理が側にいてくれるなら、何だってする。それこそ、子供だって産んでみせる。  だから、離さないでいて欲しい。 「俺も、彩里さんが好きです……いいえ、愛してます」  そう言うと、婀都理は俺から離れてニッコリと笑い、顔を近づけて来る。  俺は、目を閉じながらそれを受け入れた。  それはそれは幸せな、キスだった。

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