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「国近さん、違いますよ、大丈夫…ゆたかさんを操っている存在がいるんです」 「え…?」 「妖怪地縛斬り」 「よ、妖怪?」 「そいつが、地縛霊として苦しんでいたゆたかさんを地縛を斬ってやるとそそのかして代償に、ゆたかさんの魂と融合し、ゆたかさんを操り、憎しみの心を増大させ、1番その想いの強い人間へ取り憑かせ生気を奪っていく…地縛斬りはそういう妖です」 「……」 「最近は滅多に出てこない妖怪なのに…どうして」 そう首を傾げる青年を見つめ… 「お前、一体何者だ?」 そう問いかけてしまう。 「僕はべつに…ただ先祖代々霊媒師を生業にしていた家で、霊や妖怪の資料がたくさんあったんです、見た感じ、国近さんに取り憑いているのは普通の霊じゃなかったから、気になって調べてみただけです」 「東洞…」 「他の人には内緒ですよ…職場に居づらくなりますから」 「あぁ…ゆたかは操られてんのか?」 「はい、でも、ゆたかさんにとって想いが1番強かったのは貴方なので、何かしら伝えたいことがあったのかもしれませんね」 「…恨んでるんだろうな、…それでも、妖怪なんとかから、ゆたかを助けてやれないのか?」 「…少し時間をください、何かうちの資料に解決策が書いてあるかもしれないので…」 「東洞、悪いな…新入早々…」 「いえ、国近さんの命の方が大切ですから」 「すまない」 「指導役がいなくなったら困るのは僕ですからね」 そう微笑みを向ける東洞。 「ありがとう」 俺は、それに素直に礼を言っていた。

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