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《ゆたかの苦しみ》

ひょんなことから、新入社員の東洞と親しくなった。 昔自殺した親友のこと。 誰にも話していなかったことを、的確に言い当てた… それまでは幽霊なんかこの世に存在しないと思っていた俺が… 180度世界が変わる出来事だった…。 新入社員の東洞尊は、仕事の出来は相変わらずだったが、終業後は俺と毎回食事に行くようになった。 もちろん、俺に取り憑いているという、この世に存在しないゆたかのことについて話し合う為…。 なぜか東洞は、店に来ても食事らしい食事をしないのだが…。 今はそれより、ゆたかのことが気になる。 「何かわかったか?」 「地縛斬りは、魂に融合、ゆたかさんの魂に混ざり合った状態になるので、分離させるのは難しいみたいです、魂に取り憑いたゆたかさんごと、封印してしまうか、祓って完全に消滅させるか…」 「そうなると、ゆたかはどうなるんだ?」 「輪廻の輪から外れてしまいます」 「りんねのわ?」 「地上から召された魂は、1度霊界へと帰り…魂を綺麗にしたあと、再び地上へと産まれる…これを輪廻転生といいます」 「………」 「人はこれを繰り返しながら生と死を歩んでいるんです、その輪から外れるということは…2度と生まれ変わることの出来ない存在へ…虚無になり、果ては妖怪のような存在へと変貌してしまうかもしれない…」 「ゆたかが妖怪に…?人間に生まれ変われないのか?」 「……」 「そんな…助ける方法はないのか…!」 これ以上、ゆたかを苦しめたくない… 「……望みは少ないですが、地縛斬りとゆたかさんを切り離す方法が…今ならひとつだけありそうなんです…」 冷静に語る東洞… 「なに!あるのかっ!あるなら…」 藁にもすがる気持ちで叫んでいた…

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