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第41話

そうしてなんとか、午前中の仕事をこなし… 昼休みに入る。 いつもは東洞が残した仕事を片付けてから昼に行くのだが… 話もしたかったから…今日はそのままにして聞いてみる。 「東洞、昼はどこで食うんだ?」 「ここで食べます」 「そうか、もう少し静かなところで食べないか?昨日の話も気になるし…」 「…はい」 「まあ、話したくないなら無理には言わないからな」 「いえ、行きます!」 「じゃ、行こうか」 オフィスから少し歩いたところにある個室。 古株の俺だから知っている静かに飯が食える穴場の場所だ。 「面談室…」 冷暖房完備、机と椅子があり、食事するには充分なスペース。 「ここならプライバシー保てるだろ?なにか見えるか?」 「いえ、素敵な場所です」 東洞は部屋をぐるっと見渡して微笑む。 「じゃ食うか、それも昨日の奴が持たせた飯か?」 テーブルについて促す。 東洞はカバンに入れてある弁当箱を取り出した。 「……国近さん、昨日はせっかくおかず作ってくれたのに…本当にごめんなさい」 やはり申し訳なさそうに頭を下げる。 「もう謝るな、お前のせいじゃないだろ」 「…でも、本当に美味しかったんです、全部食べたかった…」 悲しそうにいう東洞へ… 温めたパックケースを出しながら… 「それだが、持って来てるけど食うか?」 「え?」 驚いた顔で見返す… 「昨日の今日だからまだ食えるぞ、流石に俺一人で食い切れないしな、お前の食材だし…」 「本当に!?」 「食べるか?」 優しく勧めると… 「はい!」 大きく頷いて、子どものように目を輝かせている。 「ならどーぞ」 そんな様子に自然と笑顔が浮かぶ。 「いただきます!!」 「そんなに味変わらないだろ?」 「はい、すごく、美味しいです…本当に…っ」 夢中で食べる東洞… その瞳から不意にポロっと涙が零れ落ちる。 「え、おいおい泣くほどか?」 その反応には、少し驚いてしまうが… 「国近さん…ありがとう、ございます…」 諦めていたことが叶う喜びを噛み締めて… 涙をぬぐい、お礼を言いながら食べ続ける東洞。 「……」 そんな東洞の頭を優しく撫でてやる。 可愛いな…と無意識に思っていた…。

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