54 / 300
第54話
無視して門の手前まで来て、外を見る。
この辺りは、この家の霊気を狙ってただでさえ悪霊、動物霊が集まりやすい。
目に留まるだけでも40数体は霊魂が浮遊している。
その中に結界なしで出て行くのは…
武器防護服なしで戦場に突入するのと同じこと…
額には脂汗が滲み出る。
尊は生唾を飲み込み…恐怖心から無意識に上がる呼吸を抑え付け…
「尊ッ戻れ!無理だ…」
さらに優志が追って、尊の肩を掴んで留めるが…
「ッ…」
それを力いっぱい振り払い、尊は駆け出して門の外へ出て行く…。
「ッ…バカっ!」
優志は叫ぶと、符を取り出しながら尊を追う。
「ッ…く、」
尊は護符で集まる霊たちを払い除けながら進むが…
まとわりつく数が多くさばき切れない。
一体が簡易結界を突破し身体の中に侵入してくる…
「う、…くっ、」
すぐ、印を結び、退魔を試みようとするが…
「ぐ…ぅ、ゲホッ、ゴホッ…ぅあ…ぁ!」
一体が入り込んだ瞬間…次々と浮遊霊たちが尊の身体になだれ込んでくる。
頭をガツンと殴られたような衝撃…ぐらっと意識が揺れ…
激しい嘔吐感がせりあがる。
堪らず片膝をついてうずくまってしまう。
「…一線!!」
優志が走り込んで、庇うように尊の前に立ち…
右手を横に大きく振り切り…
集まる霊体を遠ざける。
「汝が守護するもの…東、西、南、北…四方守護結界…発ッ!!」
優志が符をかざし怒号すると…
尊と優志を囲うように…光の筋が四方に走り…
近づく霊体を弾き返している。
ともだちにシェアしよう!