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第59話
「ったく忙しい時に…、尊は複数の霊に身体を乗っ取られている状態だから、清めの水で身体を外から清めながら尊の覚醒を促している…取り憑いた霊自体は尊がなんとかしないといけないから…まずは目を醒まさせて…」
面倒くさげにブツブツ状況を伝えはじめる。
「分かった、目を醒まさせたらいいんだな…」
頷いて、唸り声を上げる東洞へ近づいて行く…
「おい、馬鹿ッ待て!尊は普通の状態じゃない!獣と同じなんだ、怪我するぞッ」
その、優志の制止を流して…
歩き続け、東洞の前にくる。
濡れそぼった髪…やつれたような顔に、獣のようなギラギラした目…
「…東洞、聞こえているか、お前が会社を無断欠勤したからわざわざ会いに来てやったぞ…」
別人のような東洞に語りかける。
「俺だ…国近啓介だ、お前の担当の…分かるか?」
「…ぐぅゥ…」
「東洞…」
そう手を差し伸べるが…
「がぁァ!!」
威嚇したまま、その腕を引っ掻いてくる。
「ッ…東洞、」
引っ掻かれ、腕には赤い筋がくっきりと浮かぶが…
怯まず、まっすぐ東洞を見つめる。
「…ぐぅゥ」
その瞳にやや圧される東洞だが…
一歩近づいた瞬間…
「がぁァァ!!」
唸り声を上げて襲いかかって来た。
ガシッと両肩を掴まれ、そのまま地面へ押し倒され…
続け様に…右肩を力いっぱい噛みつかれる。
「…ッ!」
「おいッ!」
優志も驚くが…
「ッ痛、…東洞、寝ぼけるのもいい加減にしろよ…、もう、今日の仕事の時間はとっくに終わってる…」
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