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第60話
ギリギリと食い込む歯…
痛みに耐えながら…
そっと、東洞の背中に手を回し…優しく抱きしめる。
「仕事、辞めたく、ないんだろ…?ちゃんと来いよ…ッ」
息遣いの荒い東洞…
さらに、がっちりと抱き寄せ…
「ほら、お前の好きなオーラだ…ッ、好きなだけ、味わえばいい…だから、いい加減、目を醒ませ…」
そう優しく語りかける。
昨日昼、職場で霊を浄霊したとき東洞は…
穢れを癒せると…
そう言っていたから…
俺のオーラは穢れを薄める効果があるのだと確信して…
唸る東洞の身体を包み込むように抱きしめる。
そうして…
「…起きろ!東洞尊…ッ!!」
強く、その名を呼んだ瞬間…
ふっと、噛み付いていた肩口から力が抜け…
ゆっくり顔を上げる東洞。
瞳を開き…瞬きをする。
「えっ…く、国近さん…?」
我に返り、目の前に見えた光景に…愕然とする。
「ようやく、起きたか…もう夜だぞ、東洞…」
そう安心したように息をつき、笑顔を向けるが…
「…ッ、く、国近、さん…血が…ッ」
肩口の服には鮮血が滲み出ていて…
白いカッターシャツを赤く染めていた。
慌てて肩口を抑え、動揺する東洞だったが…
「うッ…っ!」
不意に吐き気をもよおし、口元を抑える。
「東洞…?」
「尊ッ!ナカに入っているものをここに全て出せ、封印するんだ!!」
後ろから優志が依り代を持ち、急ぎ促す。
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