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第61話
しかし、東洞は複数の魂に憑依されているため拒否反応が出て、激しく悶え苦しみだす。
「ぅうぁ…がぁァァ!」
「東洞ッしっかりしろ!俺が分かるか?」
暴れ始める東洞の両手首を持って引き起こし、瞳を重ね…強く言い聞かせる。
「ハァ、ハァ…くに、ちか…さん、」
意識が遠のきそうな激しい息遣いの中…
視界に入ったその顔の主を…あたたかいオーラを感じながら呼んでいた。
「負けるな、落ち着いて…為すべきことをしろ!」
瞳を重ね、言い聞かせる。
強く鼓舞され…
我に返る東洞。
「……はい、ッ…胎、業、魂、悪、鬼…全、…邪鬼依代移出…急々如律令奉導誓願何不成就乎!邪鬼封印!!」
印を結びながら…
呪文を唱え、左腕を依り代に向かって振り下ろす。
その瞬間、周りにざわっと風がたなびく感覚が走る。
不意に東洞は力無く倒れこむ…
「東洞!」
それを受け止めながら…様子を見る。
「よくやった、諸々の罪穢れ…彷徨える魂よ一つとなりて此れ征す…封印結界術、術式弐…隔離結界ッ発!!」
優志は東洞を褒め、符を持ち、その依り代へ、強力な封印結界を掛けている。
「尊、全部出たか?」
そして、力ない東洞へそう聞く…
「……」
小さく頷く…
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