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第63話

そうこうしていると、東洞は裸になっていて、水を浴び始めている。 優志が柄杓に汲んだ水を東洞は手で受けて飲みほす… 優志は柄杓の水を俺にも持って来た。 「……清め水だ、飲め…」 「あぁ…」 東洞と同じく、手で受けて飲みほす。 ちらっと東洞を見ると、こっちを見て…申し訳なさそうな顔をしている。 この傷か… 腕に引っ掻き傷と… 右肩には歯跡がくっきり残る程食い込んだ噛み跡があり、まだ血が出ていた。 痛みはあるが、腕も動くし… 「…大丈夫だ」 そう、笑ってやると… 伏し目がちに一度頷いて…禊を続けはじめる。 「黙ってやれ、肩からかけろ」 柄杓を渡し、ぶっきらぼうにいう優志。 「あぁ、ありがとうな」 そう、素直に礼をいうと… 「……っさっさとしろ」 ふいっと顔をそらし伝えてくる。 その反応に…若いな、と笑ってしまう。 その後、東洞はため水に身体をつけ… 身体を清めなければならないため… 浸かり始める。 一日中冷水を浴びせかけられ… 掛け水をしただけでも冷たいこの水… 本当に風邪をひかないか心配になる。 「お前はもういい、向こうへ行ってろ」 「あぁ、東洞…風邪ひくなよ」 そう声をかけると… 微笑んで頷く… 「早く行け」 さっと東洞を隠すように割って入る優志。     

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