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第64話
「あぁ…分かったよ」
その様子を微笑ましく思いながら、頷いて水場をあとにする。
広間に座って待っていると…
しばらくして、優志が戻ってくる。
「…あ、東洞は大丈夫か?」
「あぁ、手当したらあんたは帰ってくれ」
そう言うと腕と肩の手当てをはじめる。
「あぁ、お前は東洞のことを本当に大切に思っているんだな」
優志の行動を見ていたらそれがヒシヒシ感じられた。
「……お前には分からない…俺は、尊の為に生きてきた…ずっと尊を守ってきたのは俺だ…お前なんかが入り込むすきは1ミリたりとも無い…」
ムスッとしながら答える優志。
「…あぁ、もちろん…お前から東洞を取ろうとは思って無いから安心しろ、お前らみたいに若い奴らが頑張っているのを見たら手を貸したくなっただけだから…」
東洞には借りもあるし、担当になった縁もあるから…。
「……」
優志は無言で肩の手当てをしてくれる。
「東洞も、俺のオーラが気に入っているだけなんだ…本当に大切なのはお前だよ」
「……」
「ただな、東洞も人間だから、意思はあるんだ…あいつは今は仕事がしたいと願っているんだから…少し許してやってくれないか?無理はさせない、できる限り定時に返すようにするから…」
そうやんわり頼んでみる。
「……ッ早く帰れ」
手当を終えて…優志はぶっきらぼうに言う。
「あぁ、天河守…手当てありがとう、東洞に伝言頼む、明日来れそうになかったら連絡くれ…と、じゃ…」
頭を下げて伝え、その屋敷を後にする。
「……」
その、邪気のない後ろ姿を、無言で見てしまう優志だった。
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