67 / 300

第67話

優志は尊を抱き寄せたまま囁く…。 「……」 離れられない… 今回のことで…改めて、僕は…優志さんの結界なしでは、普通に生きていけないことを思い知らされた。 どんなに足掻こうが…運命に抗おうが… 答えは決まっていて… それが自分の限界だと…思い知らされる。 醜い姿を国近さんに見せて…怪我をさせて… 優志さんに迷惑をかけて… 「お前は、俺がいれば…生きていける、一般の人間と馴れ合う必要はない…無理に外に出る必要は無い…違いを思い知らされて、お前が傷つくだけなんだ…」 「……」 「…今回のようなことがあれば…一般の人間には、狂ったようにしか映らない…お前のこともあいつだって…」 取り憑かれて…自我をなくす姿を見て… 国近さんはどう思っただろう… 流石に… 気持ち悪いと思われたかな… 恐怖心を与えてしまったかもしれない。 謝っても…安心させても… 心に刻まれた恐怖心はそう簡単には拭えない… 明日からの国近さんの態度が怖い… 国近さんは、変わらずいてくれると、思う一方で、それが本心かは…分からないから…。 でも、それでも…国近さんに会えなくなるのは嫌だ… せっかく繋がれた縁だから… 明日も会社に行きたい… 国近さんにもっと教えてもらいたいから… 「……分かって、ます」 気持ちを整理して答える尊。 「それでも…まだ外へ行きたいのか?」 「…行きたいです」 振り返り、まっすぐ瞳を重ねて意志を伝える。 「……俺たちが、一般の人間に理解されることは無いんだぞ」 「それでも、僕は…仕事に行きたい…優志さん、行かせてください…」 頭を下げて必死にお願いしてくる。 そんな様子を見て… 「……分かった、」 たっぷり考えて…優志は頷く。 「いいんですか!?」 ぱっと表情を明るくする。 「ただし、お前の身に何かあったら直ぐ辞めさせるからな!」 「はいッ…ありがとう、ありがとう…優志さん」 嬉しくて優志にお礼をいい抱きつく… そう、喜ぶ尊を見つめ…優しく抱き寄せながら…複雑に思ってしまう優志だった。

ともだちにシェアしよう!