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第72話
「…お前の人生なんだから、生き方はお前が決めればいい、自分の体質を考えて無理をしないようにな…もう、お前は分かっているだろ?」
「……はい、国近さん、ありがとうございます」
「いや、まあ…お前が途中で辞めたら担当の俺の指導能力がないことになるしな…」
「そうですね、」
くすっと笑って頷く東洞…
「そうですねってお前な…」
「ふふ…僕、やっぱり仕事に来て良かったです…」
「え?」
「国近さんに逢えたら…元気出ました…」
「またオーラか?」
「それもありますけど…国近さんは国近さんだから…」
差別されない…
あんなことがあったのに、澄んだオーラは変わらず澱みなくて…
綺麗なままで…
安心して、隣にいられることが幸せだと感じて…
「どういうことだよ」
「いえ…なんでもないです」
「……?」
「僕、仕事頑張ります、国近さんには…また迷惑かけてしまうかもですが、これからもよろしくお願いします」
「おう、面倒見はいい方だから、心配するな」
そっと頭を撫でてやり、そう伝える。
「はい、ありがとうございます」
ニコッと微笑んで…
素直にお礼を言う東洞を見て…
自然と微笑んでいた。
相当変わり者で、手のかかる奴だが…悪い奴じゃないから、ついつい手助けしてやりたくなる。
霊能力者…東洞が見ている世界は、俺には想像もつかない世界なんだろう…
それでも、世の中に出ることを諦めず、運命に抗いながらでも、仕事を頑張ろうとする姿は…尊敬さえ思える。
こいつが少しでも笑って暮らせるようにサポートしてやりたいと…
前に増して思うようになっていた…。
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