78 / 300
第78話
「えー…なんで、僕、国近さんの隣がいいです」
「尊!」
それを聞いた天河守は怒りながら名前を呼ぶ。
オーラの見えない俺でも…
天河守が不機嫌オーラ全開なのは伝わって来て…
「東洞、とりあえず行きは前に座れよ、ほら」
苦笑いしながら東洞を促す。
「国近さん…分かりました…」
残念そうに頷く東洞…
助手席に乗り込み…
「じゃ帰りは後ろに乗りますね」
にこにこしながら、そうこちらを振り向く…
天河守の視線が痛い…
そんなこんなで、道中は東洞の話を聞きながら、天河守に気を遣いながら…目的地を目指した。
途中何度か、東洞の能力を感じる出来事があった…
1時間ほど走って、まあまあ街中を走っていた時…
普通に話していた東洞が不意に話をやめ、交差点の角を見て…
「あ、あそこの角…女の人が立ってます?」
「いない、無視しろ…」
優志は素早く答える。
信号で止まっている間、交差点を見るが人影は見当たらない…
「はい…手を振って来てますが…」
「無視しろ、目を合わせるなよ…」
「はい…」
車が動きだし、交差点を通り過ぎるが…
「っっ!」
不意にビクッとする東洞。
「…優志さん、ついてきてます…窓に…顔だけ…」
やや弱り顔で…
ぽそぽそ…小声で優志に伝えている。
どうやら、東洞が乗っている助手席の窓に顔だけの女が張り付いて、走行中もついてきているらしい…
そんな状況…ホラーでしかないが、東洞にしかはっきりと認識出来ないため、怖がっているのは東洞だけだ。
ともだちにシェアしよう!