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第79話
「目を合わせただろ…ったく!」
「だって…」
「結界を張ってあるこの車の中に入ってくることはない、無視してろ」
「…ぅ、すごい威圧感なんですけど…」
窓から遠ざかりながら…
窓に顔を向けないようにしている東洞。
「何か言ってるか?」
「連れて行ってって言ってます…」
「話は通じるか?」
「いえ…すでに妖怪化しつつあるので、ダメですね…頭部だけついてきてますし…」
「身体は交差点に縛られているのか…」
「…祓いますか?」
「いや…弾くか、こんなことでお前を消耗させる訳にはいかないし、倉橋先生のところに連れて行く訳にもいかないしな…」
東洞に、力を使わせないよう、優志が対応するようだ…
「はい、お願いします…」
「……はぁ」
そう溜息をつく優志。
女の幽霊がろくろ首のように首を伸ばし…走行中の車の窓にへばりついて、連れて行ってと繰り返しているらしい…
2人の会話はかなり恐ろしい状態を伝えているのだが、何気に話している様子にさすがプロだなと感心する。
優志は、車を一時的にひと気のない駐車場へ停める。
「まだいるのか?」
気になり聞いてみる。
「はい…中に入りたがってます」
「……」
俺と東洞が話している間に、優志はメガネをかけて、符を準備している。
「天河守、目が悪かったのか?運転中も眼鏡かけとけよ」
「馬鹿か、目は悪くない」
「え…?」
ムスッとした顔で言い返される。
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