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第82話

数時間車を走らせ… かなり山あいの道に入ってきた。 「ずいぶん山奥に入るんだな…」 「霊力がある人は、やはり人混みが苦手なので…」 「そうか…」 「あと、自然は清らかな気で満ちているので…都会よりは田舎の方が暮らしやすいです」 「なるほどな…」 「お前に何がわかる…わかりもしないくせに…」 ムスッと文句を言う優志。 「優志さん!」 「そうだな…でも、分かろうとすることは悪いことじゃないだろ?」 そう、優しく諭してみる。 「……」 「ですね」 ニコっと相づちをうつ東洞。 「知るか…」 フンと鼻をならす天河守優志… なかなか素直になれないやつらしい。 なんやかんやで目的地に到着する。 かなり山奥の印象、見渡す限り、この辺りには家はない。 しばらく歩くと、やはり立派な門構えの昔ながらの純和風邸宅が姿を見せる。 しかし、門の脇には小扉とインターフォン。 昔と現代とが微妙にコラボしている。 優志がインターフォンを押し、使用人か、女の人が出迎えてくれて、屋敷の中に入る。 「あ!倉橋先生!お久しぶりです」 玄関に立っている和服姿の青年に向かい、東洞は駆けて行く。 着物を羽織り、歳は若く見えるが30代半ばか… 人当たりの良さそうな優しい笑顔に、落ち着いた雰囲気… 髪は、東洞と同じく黒髪長髪で… 東洞より長い髪を後ろにひとつに結んである。 「お久しぶりです…尊くん、元気そうでなにより」 相手は優しく微笑み、ゆっくりとした口調で出迎える。

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