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第90話

「それに、たぶん中学の頃にゆたかさんの事件を経験したことで、国近さんはその後の生き方を改めた為、『自分だけ幸せになれない』気持ちで我欲を捨てた生き方をしてきたからオーラが澱まなくなったんですよ」 「そうなのか…」 「オーラは幼い頃は皆綺麗なんです。人間や動物の赤ちゃんを見たり触れたりして癒されるのは根本に綺麗なオーラを発しているからなんです…」 「なるほどな」 「国近さんはもともと人並外れた綺麗なオーラなんですけどね。中学、高校生くらいになると人間関係や我欲によって少しずつ澱んでいくのが当たり前です、だから…ゆたかさんのことがなければ、国近さんのオーラもみんなと同じように澱んでいったと思います」 「ゆたか…」 ゆたかの死よって、確かに大きく考え方も生活も変わった… 償いの人生を独り生きて来たから… 「国近さんの、うやむやにしない心、ズルをせず、自分に嘘をつかない心がオーラを綺麗なままでいさせたんでしょうね、ゆたかさんへの思いもずっと忘れず償いの気持ちを持ち続けていた…、なかなか出来ないですよ」 「そうなのか?俺の言葉で…ゆたかの人生を狂わせたなら、そのくらいは当然だろう…」 「ゆたかさんが亡くなったのは、様々なことが起因していて国近さんだけのせいではないと思いますが…それでも国近さんは償いの気持ちを持ち続けた、それが国近さんの凄いところです、それに事柄を平等に観て、損得なしに他人を思いやれる心も…」 「そんな自覚は無いんだがな…」 「国近さんは自然とできているんですね、普通…人は誰しも自分の利益になる行動をとってしまいがちです、無利益で自分を犠牲にしてまで行動を起こそうとする人はなかなかいません、けれど国近さんは僕のことも、自分が怪我をしてまで助けてくれました…仕事に関しても残業を厭わないですし…」 「でも、それでいうと、お前のことを無償で護っている天河守もオーラは綺麗なんだろ?」 「優志さんは…澱んではいませんが…国近さんとはもともとのオーラの質が違うんだと思います、それに無償ではありませんし…」 「え?そうなのか?」 「はい、天河守家には昔から専属結界師契約をして、うちから給料のようなものは支払っています、食材費なんかも含め…」 「尊、それ以上話すな」 黙っていた優志が不意に厳しい声で止める。

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