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第92話
「…それに…、尊は、何度言い聞かせても奴らを無視できない性格だから…外に出ると余計なものを拾って帰ってくる…しなくていい浄霊をするはめになるんだ」
優志は溜息をつくように話し出す。
「あぁ、確かに…前、会社にも子どもの霊を拾ってきたことがあるな…」
話をしたら付いて来たとか言っていたが…
「…俺は尊に余計な力を使わせたくない、だから…家から出て欲しくない」
「……そうだよな、お前からしたら…心配して当然だ、やはり東洞が霊媒をするのは良くないことなのか?寿命を縮めるとか言っていたが…」
「霊媒自体は、強力な体質だから影響は少ない…問題は胎内に残る穢れの蓄積…それに呑まれて命を失うことがある」
浮遊霊は穢れを孕んでいる。身体に憑依させれば、その穢れが胎内に残ってしまうから…
「そうか…穢れさせなために霊媒をさせたくないのか…こいつも、お前も本当に大変な宿命なんだな…」
東洞がなまじ言うことを聞く奴ならいいが、今の様子は大人しく優志の言いつけを聞く奴じゃないからな…
「例え取り憑かれていたとしても…尊の身体を犠牲にしてまで一般の人間を無償で助ける必要はない」
しかし、優志は頑なに一般の人を拒む。
「な、天河守、お前が一般人を嫌う理由…何かトラウマになるようなことがあったのか?」
その理由が気になって、何気に聞いてみるが…
「……」
「……言いたくないなら言わなくていい、けど…お前の言う一般の人間も悪いやつばかりじゃないんだ、親身に考えてくれる奴もいる」
そうさとしてみるが…
「……それはない」
優志の答えは簡潔だった。
「天河守…」
「尊の能力を知ったら…あんただって悪用するはずだ…」
「そんなことは…」
「人間は、欲には勝てないんだ…能力の無い人間は信じられない…」
頑なな優志…その目は憎しみさえこもっているように見えた。
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