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第100話

そして場所を移動し、優志の車に乗り込み、助手席に座る。 「ゆずきって…」 優志も乗りこんできたのを確認し、気になる名前をもう一度問う。 「柚木航平…尊に、はじめてできた能力を持たない普通の人間の友達だった」 すると…息をついて話し始める。 東洞尊の過去の話を… 「尊は幼稚園も小学校も行かせていない…霊媒師は基本屋敷から外へは出ない、一般人とも関わらせないのが代々の決まりごとだから…勉強は俺が家庭教師になり教え、あとは霊媒師の力を磨いていた…」 それは、尊が10才になる前のこと… 「……」 尊が、いつものように屋敷の庭で1人で遊んでいた時… たまたま庭にサッカーボールが転がって来て… 取りに入ってきたのが柚木だった…。 お互い同じ歳の9歳。 尊にとっては初めて見る同じ歳の少年だった。 『ね、名前なんて言うの?おれは柚木こうへい!』 ゆずきはとても気さくな少年だった。 『なまえ、…えっと、…とうどうたける』 『たけるか!かっこいい名前だな、たける!…っていうか男子なんだな!髪長いから女子かと思った』 その頃から髪を伸ばしていた尊の見た目は浴衣を着ていたこともあり、女の子のようだった。 『だんし、じょし?』 『男か女かわかんなかったってこと!』 『ぼく、男の子…だよ』 『だよな、じゃサッカーしたことある?』 『ううん』 『こうやってボール蹴るの、楽しいよ、一緒にやる?』 『うん』 柚木は様子を見に来た優志にも気さくに話しかけ、3人は直ぐに仲良くなった。 あの頃はまだ、一般人への警戒もあまりなかったから… 度々遊びに来るようになった柚木は…何も知らない尊に、外部の情報を色々教えていった。

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